Oさん:私たちが手がけている製品は、生体情報を無線で伝送する「医療機器用の無線機」です。長野日本無線が得意とする「特定小電力」という無線技術を用いて、免許が不要な医療用400MHz帯を扱えるように応用しています。無線機は小型で低消費電力、妨害波特性にも優れているんです。
project story
不測の事態を乗り越えて
無線の技術で医療を支える
長野日本無線が得意とする技術「特定小電力無線」。これは免許が不要で、誰もが扱うことのできる無線設備の一種です。今回紹介するのは、とくに規約が厳しい医療用無線機のフィールドで、命を守る設計開発に挑む3人のストーリー。
2020年には、メーカーの火災で主要部品が入手できなくなる不測の事態が発生。困難を乗り越えて安定供給をかなえた約1年間のプロジェクトを振り返りました。
PROFILE
K・Oさん
ICT事業部
情報通信技術部
部長
H・Kさん
通信第一技術グループ
主任
T・Nさん
通信第一技術グループ
「特定小電力無線」とは?
長野日本無線が得意とする技術
手がけたプロジェクト「医療用機器の無線機」
Kさん:私やNさんは、この特定小電力無線の設計開発をしています。「医療機器用の無線機」をより具体的に説明すると、病院で心電図検査がありますよね。ベットで寝ている状態で患者さんが送信機をつけて、それを電波に乗せて、あらゆる生体情報(たとえば心電図や酸素などのデータ)を、ナースステーションで確認できるようにするものです。
不測の事態から完成するまでの道のり
Nさん:そもそも、医療機器用の無線機の案件はイレギュラーに発生したものでした。短い期間の中で問題解決を必要とされ、いろいろな苦労がありましたよね。
Kさん:この無線機自体は、2019年2月から生産開始しました。ところが無線回路にかかわる主要部品を扱うメーカーの工場で火災が発生して入手できなくなって。一方でお客さまからはどんどん量産して納品してほしいという要望もあったので、供給を止めることはできない。そこで急きょ従来品から設計変更をすることになりました。
Oさん:それが2020年11月。設計変更から量産までは約1年あったけれど、実際は半年ほどで進めたのかな。
Kさん:そうですね、実際に着手したのが2021年3月。従来品の性能を担保しつつも、根本的な設計そのものを変えなければならず苦戦しましたね。キーパーツとなる部品の変更によって、ほかにも仕様を変更しなければいけない部品が生じたりしました。この仕事に携わって15年になるけど、こういう事例ははじめてでしたね。
Oさん:普段であれば、キーパーツの変更や廃番になる場合は事前にわかるので、我々も備えられるのですが...。今回は事故で誰も予測できなかった。ある日突然、部品が買えなくなってしまったわけですね。めったにありません。
Kさん:なのでお客さまに安心していただけるよう、まめにwebミーティングを開いて情報共有をしていきました。
Oさん:そういったやり取りで、KさんとNさんが根拠をもった説明をしていった。そのおかげで信頼関係が生まれ、協力を得られたのだと思います。Nさんもこの案件を通じて一段と頼もしくなりましたよね。
Nさん:こうしてふりかえってみると、成長するいい機会になったと思います。とくに医療用の無線機は、情報を正確に届けるために無線性能の規格が厳しいんです。
自分で調べても、経験不足でうまくいかないことも多かった。それでも、先輩方の力を借りて、乗り越えることができました。
Kさん:製品を無事に出荷できて、お客さまに喜んでいただけたときは安心しました。
Oさん:そうですね、お客さまに喜んでいただけることが、一番嬉しいですね。技術部のノウハウがあれば対応できると思ったし、だからこそ短期間で対応できた。あとはやっぱりコロナ禍の医療機関で必要とされている製品なので、長野日本無線がもっている技術を通じて、間接的に社会的責任を果たせるとも考えました。
ひとつの製品に、最初から最後まで
主体的に関われる。
大企業にはない〝ちょうどいい〟会社の規模
長野日本無線ならではの
「ものづくり」の魅力
Kさん:この仕事をしていると、世のなかに出ている製品に私たちの技術が使われて役立っていると実感できる。特定小電力でもさまざまな製品があって、部署の垣根を越えてひとつのプロジェクトを遂行していくのは技術者にとって魅力的な部分です。さまざまな案件を通して、社会的にも人間的にも成長していると感じます。
Nさん:技術者主体で設計の企画から商品化まで携われることが一番の魅力です。とくに試作とか設計の部分でいえば、セミナーなどで身につけた知識や新しいシミュレーションの方法をどんどん導入していける。そうやって自分なりの工夫を入れると、製品に愛着が湧いていきます。
Oさん:長野日本無線は、ひとつの製品に最初から最後まで主体的に関われる。技術職、技術者という視点で成功と失敗を見ると、失敗のほうが多いんです。開発設計というのは、失敗の積み重ねが成功につながるので、誰もその失敗を責めたりはしない。今後はDXや新しい分野にも着手していくと思うので、これから入社する仲間と一緒に、明るい未来を創造する〝チームのものづくり〟で、新たな技術に挑んでいきたいですね。